子どもの支持的精神療法

支持的精神療法とは、文字通り患者さんを支えるような関わりで、日常の臨床場面で幅広く取り入れられている技法です。私の周囲では、実は支持的精神療法って最強の精神療法なのでは、という説もあったりします。


受容、共感、傾聴などの基本的な治療態度は、子どもさんの場合でも同じかと思います。ただ、子どもさんの場合は、成長・発達段階に応じて、適宜修正する必要が出てきます。3歳の子に対する受容的態度と、15歳頃で思春期心性もある子に対する受容的態度は、同じでよいところと、そうでないところがあるのかな、と思ったりもします。


支持的な態度、ということと関連して、子どもさんの診療では、養育者と子どもさんのユニットで見る視線も必要かなと思います。なお、主たる養育者の方は様々ですが(お母さんだけでなく、お父さんであったり、おばあちゃんであったり、色々ですよね。事情があって施設等で養育されている子どもさんもいます)、ここでは、そういう方達の母なる機能というものを代表して、”母”と記載します。


診察室を上から見てみてます。


母子ユニットでみると

①の矢印です。こんな感じで、子と母を別個の存在としてではなく、”子と母"という存在として支えるイメージです。例えば子どもさんに不安があっても、母親がうまくケアしてあげれていれば、母子ユニットで見ると、なんとかなりそうかな、とか。母子ユニットって、とっても大事です。それが適切に機能しているかどうかって、治療を大きく左右すると思います(私見)。でもそのためには、

②の母と子どもさんの関係が、どんな感じなのか、ということを注意しないといけません。母子ユニットが適切に機能できているかな、大丈夫かな、という感じ。診察室内の雰囲気とか、普段の様子とか。一番重要なのは、母子関係における程よさ(good enough:Wnnicott)、ゆとり、でしょうか。そんな雰囲気があれば、大丈夫かな、と。

で、もちろんですが、母子ユニットだけでなく


③の治療者と子どもさん、④の治療者と母、の関係も注意しないといけませんね。母子ユニットとして介入しつつ、ちょっと母親のサポートをしてあげた方が良いな、という感じであれば④に少し力点を置いたりとか(母に別の矢印の支援が必要そうであれば、別の支援者に依頼という方法も必要ですね)。ちなみに、ブログで上げてき子どもさんと直接関わる技法は、③の矢印に介入していくイメージです。家族療法的なアプローチは、ここに出てくる矢印全部に気をつける感じでしょうか。


というわけで、子どもの心の診療をするということは、4つくらいの関係性に配慮する必要があると言えるかもしれませんね。子どもさんの診療って時間がかかるな、とか、エネルギーを使うな、という感想を述べられる方がおられますが、この矢印の数を考えると当然ですよね。もちろん、この矢印は、ここに登場していない家族(お父さんとか、兄弟姉妹とか)、地域支援者が登場すると、少し増えるわけで、注意することが増えるのは言うまでもありません。でも、基本的な構造はこんな感じなのかな、と思います。


程よさgood enoughや、ゆとりは、支持的精神療法で大事な考え方だと思っております。そのためには、治療者自身にも程よいゆとり、が必要です。自分の感情をモニターして、程よさを保てるようにすることも、支持的精神療法では大事ですね。自分のこともしっかりと支持してあげましょう!

うめぼしの会

児童精神診療・研究に日々携わっている専門家の集まりです。心の問題を抱えた子どもや家族、彼らの支援者をサポートするために活動していきます。いまは準備段階ですが、われわれの実務経験をもとにして何ができるか考えているところです。

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