子どもの心の薬物療法について

薬物療法を行う際の大前提として、治療関係はとっても重要です。まずは治療関係を構築することに努めましょう。


説明は丁寧に、時間をかけて

子どもの患者さんの場合、養育者の方に説明して、理解していただくことが重要ですが、子どもさんに対しても、発達段階や理解の度合いに応じて、わかりやすく説明する工夫が必要です。そのためには、子どもさんが今自分の状況をどう理解しているか、というところから始めると良いと思います。そして、そういったことと薬物療法の効果との関連を説明したりします。「そっか、そんなら〜はお薬で少し良くなるかもよ」、とか。あと、副作用等々の説明で役に立つのが、身近な確率です。100人に1人くらい、と言われてもピンと来ないこともありますよね。身近な例えで説明するとわかりやすいです。たとえば、アイスのガリガリくんで当たりが出るのは約3%、じゃんけんで2回連続で勝つのは25%、10回連続で勝つのは0.1%らしいです。頻度1%程度の副作用であれば「ガリガリ君で当たり出るよりは難しいみたいだよ」とか。0.1%であれば、「じゃんけんで10回連続で勝った人って周りにいる??いないよね?だから、結構珍しいみたいだよ!」とか。ちなみに私はガリガリ君の当たりが出たことは人生で1回程度しかありませんが・・・


養育者の方に対しては、薬剤の効果があると考えられる症状、それに対して効果があると思われる薬剤の選択肢、それぞれの薬剤の特徴、効果発現まで要する時間、薬剤の効果の限界、副作用(稀で重篤なものも含めて)と対処の仕方等々・・・・。言葉だけで難しい場合は、紙に書いたり、参考資料等を使いながら、養育者の方がしっかりと納得して、腑に落ちるまで説明する時間をとります。1回の診察では不十分そうであれば、一度持ち帰っていただいて、次回の診察までに考えていただくこともあります(もちろん緊急性が高い場合は別です)。このプロセスはとっても大事ですので、丁寧に時間をとってやると良いと思われます。それに、このやりとりは、子どもさんにとっても重要だと感じることもあります。子どもさんにとって、主治医の説明が難しい内容だったとしても、主治医と養育者(今仮にお母さんとしてみます)のやりとりをみて、「あ、お母さん、先生と大事な話してるんだな」、とか、説明を聞いて納得したお母さんの様子を見て、「あ、お母さん安心したみたいだな」とか、そいういうメッセージが、お母さんの表情、声のトーン、雰囲気等々の非言語的な表現で伝わっているのかな、と思ったりします。そうやりとりを通して、子どもさんに「お母さんが安心しているなら、この薬飲んでも大丈夫だな」、と感じてもらえるのではないか、と思ったりもします。というわけで、私は薬の説明をするときは、養育者の方を通して子どもさんにも語りかけるつもりでやるよう心がけています。

うめぼしの会

児童精神診療・研究に日々携わっている専門家の集まりです。心の問題を抱えた子どもや家族、彼らの支援者をサポートするために活動していきます。いまは準備段階ですが、われわれの実務経験をもとにして何ができるか考えているところです。

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