子どもの家族療法

子どもの心の臨床では、子どもさんだけでなく、家族全体をみていく視点が重要です。

家族療法とは家族を対象にして精神療法的にアプローチしていく手法です。家族療法にも様々な技法がありますが、普段の臨床で使える家族療法的な視点を紹介します。


まず、最も基本的となるのは、家族構成員を知ることです。いわゆる家系図とかジェノグラムといわれるようなものを作成してみると、そこら辺の情報を収集できます。子どもの親や祖父母の世代くらいまで・・・普段何をしているのか、とか、誰が同居しているのか、とか。それを書く過程で、色々な情報を収集することができます。そして、それが子どもにどんな影響を与えているんだろう、と考えてみます。例えば、「ああ、この子のお兄ちゃんは今大学受験なんだな・・・とすると家の中はお兄ちゃんに配慮して気を遣ってるのかな。それで家だと緊張しちゃうのかな・・・」とか、「ああ、最近弟が生まれたんだな。お父さんもお母さんも、弟さんの養育で大変なのかな・・・ひょっとして、そのことで寂しい想いをしてるのかな・・・」とか。あるいは「ああ、最近、お母さんの方のおじいちゃんが同居するようになったんだな。そういえば元々厳しい人って言ってたな。だからお母さん、いつもの調子でやれないのかな・・・。それが子どもとの関わりにも影響しているんだろうかな・・・」とか(全部架空です)。そんな風に色々と考えていると、治療や支援の参考になったりすることがあります。


次に、それぞれの家族構成員の考えや感情を意識化してみる、ということが挙げられます。家族も色んなことを考え、感じてます。どんな思いを抱いているのか・・・そのためには、まず話を聞いてみる、ということ。例えば、養育者の方が、本当はどう思っているのかを聞くのであれば、その方と面接する機会を設けてみるとよいかもしれません。子どもさんや他の家族の前だと、なかなか言えないこともありますよね。


話を聞くときの注意点は、まず、じっくり話を聞いてみることでしょうか(これはどんな面接でも同じかもですが)。話を聞いていると、つい色々と口を挟みたくなってしまいますが、そこはグッと堪えて、まずは想いを聞いてみる。そんな風にして話を聞いていると、本当の気持ちをポツリポツリを述べられたり、時には涙を流しながら自らの心情を語られることもあります。そういったやりとり自体が治療的に働くこともあるのかな、と思ったりもします。

うめぼしの会

児童精神診療・研究に日々携わっている専門家の集まりです。心の問題を抱えた子どもや家族、彼らの支援者をサポートするために活動していきます。いまは準備段階ですが、われわれの実務経験をもとにして何ができるか考えているところです。

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