小児科医と精神科医:違い?

小児科、精神科、それぞれのバックグラウンドがある医師同士で、お互いの診療科の経験と、子どもの心の診療との関連について話題になったことを挙げてみます。


精神科医からみた小児科医

・普段の診療、健診等で、たくさんの子どもと接してきた経験があるので、子どもとの関わり方が上手。特に低年齢の子どもさんの診察に長けている。親御さんとの関係構築も上手。ある小児科の先生は、聴診器を当てる時、さりげなく母親の顔もみて、不安になってないかな、困りごとはなさそうかな、と、母親の気持ちの変化にも気をつけるようにしていると教えてくれました。さりげなく、というところが素敵だな、と思います。

・身体的な管理を要する状態の子どもの治療が可能。子どもの心の診療においても、ケースによっては入院して検査したり、点滴、栄養の管理、身体的な処置を要することがあります。また、子どもは身体症状を訴えることも多いですが、その場合でも自分で身体診察、検査等ができます。子どもの心の診療は経過が長いこともあるので、心と身体の両方ともみながら、トータルで子どもをケアできるというのは強みだな、と思います。最近は初期臨床研修で、小児科の研修を経験した精神科医も増えてきてはいますが、それでもやはり、専門的なことは小児科の先生に教えていただくことが多いです。


小児科医からみた精神科医

・向精神薬の使い方に慣れ親しんでいる。精神症状の評価の仕方、薬剤のチョイス、副作用の評価と対処など。最近は小児でも適応の通っている薬剤が増えてきて、小児科の先生方も使う機会が多くなり、使用に慣れている先生も増えてきている印象です。ただ、精神科の先生は、使用する時のコツや工夫、ファーストチョイスの薬剤ででうまくいかなかった時の選択肢を複数思いつくことができるので、参考になります。

・精神療法の基本的なことについて慣れ親しんでいる。特定の技法というだけでなく、治療関係や治療構造の考え方、面接の基本的なことを精神科で経験しています。面接で何を話せばいいんだろう、どんなことをテーマにしていけばいいんだろう、と迷った時なんかに、精神療法の技法を知っていると参考になることがあります。


 これ以外にも精神科医と小児科医の子どもとの心理的な距離感も話題になったことがありました。小児科の先生は”近い”、精神科医の先生は”遠い”、と言われたりします。小児科の先生は、普段の臨床で子どもの身体診察を通して体に触れることが多く、子どもとの物理的距離が近いことが心理的な距離の近さに影響しているのでは、という意見がありました。精神科の先生は、診察で直接体に触れる機会は少ないですし、精神症状の評価や治療をする時、自分が情緒的に巻き込まれないように、ある程度の心理的距離を要するから、という意見がありました。もちろん、これらの違いは、診療科の違いではなく、個々の医師の要因も大きいと思いますので、参考程度にしてください。また、どちらの距離感が良い、というわけではなく、”近い”支援も、”遠い”支援も、両方できるようになる必要があるのかな、と思います。

うめぼしの会

児童精神診療・研究に日々携わっている専門家の集まりです。心の問題を抱えた子どもや家族、彼らの支援者をサポートするために活動していきます。いまは準備段階ですが、われわれの実務経験をもとにして何ができるか考えているところです。

0コメント

  • 1000 / 1000